JOURNAL

DESIGN

2026/9/25

デザインは、絵を描くことだけじゃない。

最近、いくつかのデザインの仕事をしながら、改めて思うことがあります。

デザインの仕事というと、スケッチを描いているイメージが強いかもしれません。

もちろん、かっこいい絵を描くことも大切です。

でも実際に仕事を振り返ってみると、絵を描いている時間はほんの少し。

それよりも、考えている時間のほうがずっと長いです。

この技術を、どう見せたら魅力的になるのか。

クルマ全体で考えたときに、これは本当に必要なのか。

ユーザーはどう使うのか。

数年後のクルマなら、今と同じ使い方でいいのか。

市場では何が起きているのか。

そんなことを考えたり、調べたり、人と話したり。

僕の場合、そこからデザインが始まっています。

技術を、どう魅力に変えるか

自動車の仕事では、新しい技術や機能を起点にデザインを考えることがあります。

技術そのものは面白くても、それをそのままクルマにつければ魅力的になるとは限りません。

どこに配置するのか。

どう見せるのか。

どう触ってもらうのか。

普段は見せたほうがいいのか、見えないほうがいいのか。

同じ技術でも、見せ方や使い方によって、ユーザーが感じる価値はかなり変わります。

だから、形を考える前に技術の話を聞く時間も結構好きです。

「それって、どういう仕組みなんですか?」

「ここまで小さくできますか?」

「だったら、こんな使い方もできませんか?」

そんな話をしているうちに、最初とは違うアイデアが出てくることもあります。

言われたものを、そのまま描くだけではない

仕事をするときに、もうひとつ大事にしていることがあります。

それは、依頼されたものを、そのまま絵にするだけにしないこと。

もちろん、お客様が何を求めているのか、その背景まで理解することが最初です。

でも、話を聞いたり調べたりして、

「それなら、こうしたほうがいいんじゃないか」

「この技術なら、別の見せ方もできるんじゃないか」

と思ったら、自分の意見も伝えます。

ときには、

「そもそも、これは本当に必要ですか?」

というところまで戻ることもあります。

長く自動車の仕事をしてきた経験や、実際にいろいろなクルマを見て感じたこと、市場の変化。

せっかく外からプロジェクトに関わるのであれば、そういう自分なりの視点も含めて提案したいと思っています。

最初から答えがあるわけではありません。

話して、考えて、描いて、また話す。

そのやり取りの中で、少しずつ方向が見えてきます。

クルマだけを見ていても足りない

最近は、中国の自動車市場もかなり意識して見ています。

実際に中国へ行ってクルマを見ると、日本とは違う考え方に気づくことがあります。

シートの動かし方だったり、大きなディスプレイだったり、照明だったり。

AIやセンシングの使い方もそうです。

一つひとつの機能だけを見るのではなく、

「このクルマの中で、どんな時間を過ごしてもらおうとしているんだろう?」

と考えながら見るようにしています。

もちろん、中国で流行っているから、そのまま日本でもやればいいという話ではありません。

日本には日本のユーザーがいるし、それぞれのメーカーが大切にしているものもあります。

ただ、数年先のクルマを考えるなら、世界で何が起きているのかを知っておくことは大切です。

中国に限らず、クルマ以外の製品やサービスを見ることもあります。

何かヒントはないか。

今までと違う考え方はできないか。

デザインを考えるために、見る範囲はできるだけ広くしておきたいと思っています。

考える時間が8割、描く時間が2割

市場を見る。

ユーザーを考える。

技術を理解する。

クルマとして成立するかを考える。

人と話す。

そして、また考える。

頭の中でいろいろなことが行ったり来たりしていると、少しずつ、

「こういうことかな」

というものが見えてきます。

そこで、ようやく絵を描き始めます。

不思議なもので、そこまで考えられていると、描く時間は意外と短かったりします。

逆に、考えがまとまっていないと、何枚描いてもしっくりこない。

感覚的には、

考える時間が8割。描く時間が2割。

それくらいかもしれません。

[ THINK 80% / DRAW 20% の図 ]

描くときも、その先を考える

ただ、残りの2割が「きれいな絵を描く時間」かというと、少し違います。

スケッチを描くときも、頭の中ではその先のことを考えています。

この形は、本当に3Dにできるのか。

立体にしたときにプロポーションは成立するのか。

周りの部品とどうつながるのか。

実際につくるとしたら、どこに無理が出るのか。

もちろん、最初のアイデアなので、すべてを最初から成立させる必要はありません。

少しくらい飛んだアイデアがあってもいい。

でも僕の場合、最終的に3Dになり、実物になっていくことをどこかで意識しながら描いています。

絵ではかっこいいけれど、立体にしたら成立しない。

できるだけ、そうならないようにしたい。

長く自動車のデザインに関わってきたこともあって、スケッチを描きながら、頭の中ではある程度立体に置き換えています。

だから僕にとってスケッチは、完成イメージを見せるためだけのものではありません。

次の3Dにつなげるためのものでもあります。

実際に3Dにしてみると、

「ここはもう少し薄くしたほうがいい」

「この面のつながりは変えたほうがいい」

と、絵では見えなかったことが出てきます。

そこでまた考えて、直す。

スケッチと3Dは別々の作業というより、行ったり来たりしながらデザインを詰めていくものだと思っています。

デザインは、ずっとつながっている

市場を見る。

技術を知る。

ユーザーを考える。

クルマ全体を見る。

お客様と話す。

自分の意見も伝える。

そして、スケッチを描き、3Dにして、実際のものへ近づけていく。

こうして振り返ってみると、どこからどこまでが「デザイン」なのか、はっきり線を引くのは難しい気がします。

考えることも、描くことも、話すことも、形にすることも、全部つながっている。

そして、その途中で何度も戻ったり、やり直したりする。

でも、その繰り返しの中で、最初はぼんやりしていたアイデアが少しずつ形になっていきます。

何をつくるのかを考えて、どう見せるのかを考えて、最後はちゃんと形にする。

僕は、そこまで含めてデザインの仕事だと思っています。